2019.05.14 Saki Ishizuka

社会人でもアルティメット。田村友絵さんが仕事と競技を両立する理由

アルティメットとは、フライングディスクを使ったアメリカ発祥のニュースポーツ。大学から競技を始め、2016年には日本代表として世界を舞台に戦った経験もある田村友絵さんに、社会人とアルティメットの両立の魅力と難しさについて伺いました。

 

アルティメット漬けの大学生活

石塚
知っている人が少ない競技だと思うのですが、アルティメットと出会ったきっかけについて教えてください。
田村さん
大学に入ってすぐ、高校からの友達がアルティメットサークルに入るというので、その練習について行ったのが一番最初の出会いです。すごく人見知りだったので、あまり一人でいろんなサークルに見学とか行けなかったんですよね。なので、すごく運命的な出会いというのではなく、その子にくっついていったという感じです(笑)
石塚
ハードなスポーツだと思うのですが、練習は大変ではなかったですか?
田村さん
当時は全くそんなことはなく、強かった男子チームの応援部のような立ち位置でした。でも男子チームが全国優勝しているのを真近で見て、かっこいいなと思ったのも競技を続けた一つの理由ですね。
石塚
アルティメットのどんなところに魅力を感じましたか?
田村さん
一つは、フリスビーの独特な軌道かな。他のスポーツにはない魅力で、戦術面でも他のスポーツと違う面白さがあると思います。特にディスクの軌道・飛距離はその日の気候や風で左右されるので、一回も同じ試合が無いところも魅力です。

あとは、ダイナミックなプレーですかね。上競りやダイブキャッチといった“魅せるプレー”は、初心者の人が見ても興味を持ってもらえるポイントだと思います。

石塚
大学時代はどんな毎日を送っていたんですか?
田村さん
アルティメット一色という感じでしたね。授業を休んで練習したり(笑)。遠征にお金がかかるので、飲食店のバイトを掛け持ちしていました。
石塚
2016年には日本代表に選ばれていますが、ご自身の中で変わったことはありますか?
田村さん
その4年前の選考会に参加したときには、他のプレーヤーとモチベーションの差を感じてしまい、辞退してしまったんです。でも2016年の選考会の時は、所属していたチームのメンバーがアルティメットの楽しさを教えてくれたおかげで、代表としてプレーしたいという気持ちが強くなりました。
石塚
世界と戦って感じたことはありましたか?
田村さん
2016年は代表チームが若かったので、上位国との経験値の差は感じました。ただ、日本チームは技術の高さと体力は世界で通用するのだなという自信は持つことができました。練習でも走り込んでいたので、練習の成果が出たところでした。

 

人見知りも克服。趣味は男性ファッション誌で目の保養?

石塚
今はチームのキャプテンもされていますが、人見知りは克服されたんですか?
田村さん
うーん、いつの間にか。自分で努力したというよりは、周りに助けてもらった感じですね。人に恵まれているなと感じます。
石塚
たしかに田村さんって、放っておけない感じがありますね(笑)
田村さん
しっかりしていないので、よく周りのみんなにお世話してもらっています。あとは優しい兄がいるので、小さい時からこんな感じです。

石塚
ちなみに、めちゃくちゃオシャレですよね!
田村さん
ありがとうございます。お洋服も好きで、ネットショッピングはよくします。でも大学生の時はジャージで過ごしていましたし、スパイクで教室に行ってたりしていました。

あとは買い物も好きだし、ファッション誌も結構読みます。女性誌はもちろん、男性ファッション誌も見ちゃいます。外国のイケメンがたくさん載っているのを見て目の保養を…(笑)。ピアスも好きでたくさん持っているんですけど、もはやどこに何があるかわからないです。

 

仕事と競技を両立するスケジュール

石塚
今はどんなお仕事をしているんですか?
田村さん
健康製品を扱っているメーカーの営業アシスタントをしています。定時で帰れることが多いので練習しやすい環境です。
石塚
社会人になってから、競技に復帰したきっかけはなんだったんでしょう。
田村さん
大学時代にアルティメットに誘ってくれた友達が、また声をかけてくれたことですね。当時は残業も多かったので、練習環境を整えるために転職して、今の職場で働いています。
石塚
競技に専念したいと思ったことはありませんか?
田村さん
2016年に代表で負け、世界との差を感じた時には競技に専念したいなと考えたこともありました。でも他の競技でプロとして活躍する選手から競技に専念することの厳しさなどを聞くなかで、仕事もできて好きなスポーツもできる環境は幸せなんだなということを実感しました。今では両方頑張ろうと思っています。

石塚
仕事と競技の両立は大変だと思いますが、一週間のスケジュールはどうなっているのでしょうか?
田村さん
本当に大変です。火曜から金曜は仕事終わりにジムに行き、3時間くらいトレーニングをしています。土日は丸1日チーム練。月曜だけが何もないオフの日ですね。
石塚
トレーニングは、具体的にはどんなメニューですか?
田村さん
体幹トレーニングを中心にメニューを組んでいます。メニューは、プランクやバランスボールに乗りながらパスをするといったバランス系が多いです。強度の高いトレーニングは1時間くらい、あとはランメニューと前後ストレッチを入れて合わせて3時間くらいです。
石塚
日々の食生活で気をつけていることはありますか?
田村さん
気にし始めたのは最近ですね。25歳くらいまで、私のからだはお菓子とアイスクリームでできていると言っていいほど偏食だったんですよ(笑)。でもチームに栄養士さんがついてくださった時、チームの中で一番だめな食生活を送っていると言われてしまって…。それをきっかけに少しお菓子を控えて、プロテインを飲んだり栄養を考えたりしながら食事をするようになりました。
石塚
社会人としてプレーすることの魅力を教えてください。
田村さん
社会人として働く中で競技を続けるのには、時間がなかったり忙しかったりと大変なことが多いです。そんな環境でも勝ちを目指していくことがとても魅力的に感じます。自分はそれを経験したことで人間的に大きくなれたんじゃないかなと思っています。

石塚
たしかに社会人ならではの視点がありますよね。
田村さん
はい。アルティメットは審判を置かないセルフジャッジを採用しているので、ファールがあった時などは選手同士で話し合いをします。そのセルフジャッジに関する世界的な話し合いに参加したりと、アルティメットを通して様々な経験ができました。
石塚
チームの皆さんのほとんどが仕事と競技を両立しているなかでは、仕事で練習に参加できないということもありますよね。どのようにチームメンバーのマネジメントをしているんですか?
田村さん
そうですね。全員が練習に参加できない日というのもあります。それぞれ自分の生活があるので、仕方ない時もあります。そんな環境でチームをまとめるためにも、それぞれが思っていることを話すミーティングをするように心がけています。

過去には納得するまで6時間話し合いをしたこともありました。お互い自分の意見を言い合える場を設けることが大事だと思っています。

石塚
話し合いをスムーズに進めるために、社会人としての経験が役立つのかもしれないですね。
田村さん
そうかもしれません。2018年にキャプテンをやらせてもらうようになってからは、プレーでチームを引っ張ること以外にも、そういった環境を作ることも役割であると考えています。その成果がプレーにも順位にも現れるようになったことは、成長を実感できた部分でした。

 

学生時代以上に競技を楽しめる社会人プレーヤーの道 

石塚
今の目標を教えてください。
田村さん
個人としては、前回悔しい思いをしているワールドゲームズに出るのが目標です。チームとしては、近年優勝が遠のいている全日本アルティメット選手権大会で優勝して、クラブチーム日本一になることです。
石塚
アルティメットは2028のロサンゼルスオリンピックの種目登録を目指していると思うのですが、そこに出たいという考えはありますか?
田村さん
もちろんその気持ちはありますが、まずはワールドゲームズで雪辱を晴らすことを一番に考えています。他のことを考えるのはその次ですね。アルティメットの種目自体がオリンピック競技になってほしいという気持ちは強いですが、個人としては年齢の問題もありますし、これからじっくり考えていきたいと思っています。
石塚
引退後のことは何か考えていますか?
田村さん
ジュニア世代の育成には携わっていきたいと考えています。でもそろそろ結婚をして、普通に専業主婦にもなりたいです(笑)
石塚
後輩育成について考えていることはありますか?
田村さん
種目として競技人口を増やしたいという思いはあります。でもそれ以上にアルティメットの特徴であるセルフジャッジを通じて、人間的に成長してほしいなという気持ちが強いです。なので、ジュニア世代の育成ももちろんですが、競技を知ってもらう活動も続けていきたいなと思っています。
石塚
学生選手に向けてメッセージをお願いします。
田村さん
ぜひ社会人になってもアルティメットを続けてもらいたいと思います。社会人で経験するアルティメットの楽しさや醍醐味が10だとしたら、学生で経験するアルティメットは0.5しかないなと強く感じたんですよね。

プレー面でももちろん、人間的な成長という面でも社会人のアルティメットには魅力があるんだよ、ということを感じてもらいたいし、私も伝えていきたいです。