2019.07.25 LIA編集部

スポーツ強豪校の管理栄養士に聞く、スポーツ女子がとるべき食事は?

ダイエットやからだづくりを意識して食生活を送るのは良いことですが、中には間違った選択をしている人も。例えば、ダイエットのために朝食を抜くのは効果的ではありません。正しい食の知識を身につけるために、食事管理の練習ができる“大学の食堂”に行ってみました。

スポーツ強豪校として知られている法政大学。なかでも体育会系の学生が多いスポーツ健康学部には、管理栄養士2名が常駐する食堂があります。充実したメニューから、自分のからだづくりの目的に合わせた食事をとることができるので、学生に人気です。

その献立やメニューの選び方は、ワークアウト女子にも参考になることが多いはず。同学部出身のLIA編集部メンバーが、管理栄養士の天野さんにお話を伺いました。

天野さんが所属するエームサービス株式会社は、2020年に迫る東京オリンピック、パラリンピックの選手村での食堂運営を行うことが決まっています。過去にも多くの国際大会に栄養士、調理師を派遣した実績を持つほか、味の素ナショナルトレーニングセンターの食堂運営も手がけています。

法政大学スポーツ健康学部の食堂では日替わりで、肉や魚の主菜、丼もの、麺類の3種類のランチセットが用意されており、さらに4種類ものサイドディッシュの中から1つを選んで組み合わせるシステム。米と麺の量は小・中・大から選ぶことができます。

すべてのメニューにカロリーと栄養表示がついているほか、ビタミンB、ビタミンC、カルシウム、鉄といった不足しがちな栄養素が多く含まれているメニューには、それぞれを示すマークがついているため、毎日食事を選ぶたびに食事管理が身につきそう。

 

朝食抜き=痩せるは間違い。女子の減量に正しい知識を

ともみ
この食堂の特徴を教えてください。
天野さん
学生たちは、運動系の部活やサークルに所属する人が多いですし、授業でも運動の実習科目が組み込まれているので、1日に必要とするエネルギー量が比較的多いと推定されます。競技によって試合や練習の多いピーク時や、それ以外のオフの期間にも様々な学生が利用をしています。
ともみ
それぞれのからだづくりに合わせたメニュー選びが重要になりますね。
天野さん
メインが3種類、サイドディッシュが4種類あるため、合計12通りの組み合わせから選ぶことができます。焼く、煮る、揚げる、炒める、蒸すなど、調理法を変えて料理を提供することで、減量や増量、維持などの目的に応じた効率的な食事を選べるようになっています。

サイドディッシュは揚げ物からデザート向けまでバラエティ豊富

ともみ
学生から相談を受けることも多いそうですが、特に女子学生からはどのような相談が多いですか?
天野さん
ダイエットに関する相談は、やはり多いですね。競技のために減量をしている方もいるのですが、「痩せる」ことへの間違った知識が気になります。
ともみ
例えば、どのような間違った知識がありますか?
天野さん
「ダイエットのために朝食を抜いています」とよく聞くのですが、朝食を抜けば痩せるというのは間違いです。消費エネルギー量>摂取エネルギー量が減量の基本原則なので、間食や夕食でカロリーオーバーしていては減量はできません。目にした情報全てを鵜呑みにせずに、取捨選択する力が必要になってきます。

天野さん自身も、小中高とバドミントンをしていたスポーツ女子でした

ともみ
今は簡単に情報を検索できる一方で、偏った情報も増えています。学生の頃に正しい知識を身に付けることで、将来的にも理想の体型を健康的に維持できるようになってほしいですね。
天野さん
体重が減った増えたに左右されるよりも、まずは自分の消費エネルギー量を知ることが減量・増量の第一歩です。また、最近は筋トレブームの影響か、たんぱく質の摂取ならプロテインを飲んでおけばいいと考える人も多いようですが、たんぱく質の吸収には合わせてビタミンB群を摂ることも大切です。サプリメントはあくまで補助と考え、バランスのいい食事を心がけることが、理想のからだづくりにつながっていきます。

 

消費エネルギーの求め方

STEP1 除脂肪体重を計算

①体脂肪量(kg) = ②体重(kg) × ③体脂肪率(%) ÷ 100

④除脂肪体重*(kg) = ②体重(kg) – ①体脂肪量(kg)

*体重から脂肪の重量を引いたもので、筋肉・骨格・血液・神経・内臓などの体成分の重さ

 

STEP2 基礎代謝量を計算

⑤基礎代謝量(Kcal) = 28.5 × ④除脂肪体重

 

STEP3 消費エネルギー量を計算

消費エネルギー量(Kcal) = ⑤基礎代謝量(Kcal) × 2.5

 

アクティブな女性に不足しがちな栄養素

ともみ
学生の食事バランスのチェックもしていると伺いましたが、そこから見えた傾向はありますか?
天野さん
年4回の食事バランスの解析結果からは、特に果物と乳製品が不足していることがわかりました。つまり、ビタミンCやカルシウムといった栄養素が不足していると考えられます。果物と乳製品は、スポーツをするなら毎食食べてほしいものなので、食堂ではサイドディッシュの小鉢に、フルーツを使ったデザートや乳製品の提供を行っています。

食堂の机には、食べ方のコツを教えてくれるスタンドが

ともみ
スポーツをする女性に不足しがちな栄養素というのはあるんでしょうか?
天野さん
貧血はもともと女性に多い症状ですが、スポーツをする人にその傾向が顕著に出る場合があります。特に足や手などの末端に衝撃を受けやすいスポーツをしていると、その衝撃で赤血球が破壊され、貧血を引き起こしやすくなることがあります。

貧血防止には鉄分だけでなく葉酸の摂取も重要ですので、スポーツをする女性は特に意識して摂取してほしいですね。

 

ランチの改善が、3食の改善に

ともみ
この食堂を利用する学生のなかには、天野さんに直接栄養指導をもらいにくる人もいるようですね。
天野さん
「今日何食べたらいい?」と声をかけてくれたり、献立のレシピを聞いてくれる子も増えましたね。まずは1日のなかの1食でも気を遣うことで、他の2食のバランスも意識できるようになると思うので、比較的自分での調整をしやすいランチから食事改善を始めるのはいいきっかけになると思います。

天野さんに食事改善を受けている、法政大学の冨澤くん。海外のサッカーチームへの加入を目指してトレーニング中

ともみ
栄養管理を意識したきっかけはなんですか?
冨澤くん
競技力には、体格、スキル、メンタルなどのいろいろな要素が関係しますが、食事が一番すぐに改善ができて、効果が出やすいと気づいたことです。ヨーロッパでプレーしたいと考え始めた時、現地の一流プレーヤーですら食事に気を遣っているのに、僕がそれをしない理由はないなと。
ともみ
天野さんのアドバイスで変化したことはありますか?
冨澤くん
食生活のコツが徐々につかめています。それまではあまりよく考えずに食事をとっていたので、選手としては体脂肪率も高いほうでした。もう少しからだを絞りたいと考えていて、天野さんにもらったアドバイスを生かすようになってからは、理想の体型に近づいています。
ともみ
すぐに質問できる管理栄養士の方がいるのは心強いですね。
冨澤くん
たとえばジャンクフードを食べてしまったことを隠しても、自分のからだに返ってくるので意味がないですよね。なんでも正直に言いやすい関係の栄養士さんの存在は、食事管理には欠かせません。

 

食事選択の知識は一生もの

ともみ
運動強度にかかわらず、食事は卒業後も一生続くテーマ。自分にあった食事を自分で選ぶ力は、社会に出てからも必要なスキルですよね。
天野さん
大学生のうちにきちんとした食生活を習慣づけることで、一生ものの食事管理のスキルが身につきます。先ほどの「朝食を抜けば痩せる」や、「○○を食べれば痩せる/太る」といった偏ったイメージではなく、1食のなかでの食材の組み合わせや調理法の掛け合わせで、明日の体はつくられます。この食堂での1食が、食事を見直すきっかけになれば嬉しいです。

 

情報の取捨選択能力も身につく、食育の場

世の中には食事に関する様々な情報があふれています。「ダイエットしたい」「筋肉量を増やしたい」という願望に対して、なかには根拠に乏しく、健康的とは言えない方法を勧めてくる情報源もあります。それらに左右されずに、安定した食生活とからだづくりを実現するためには、からだの仕組みや食事の基礎知識をきちんと理解することが必要です。

法政大学スポーツ健康学部の食育現場には、社会人こそあらためて見直したい食生活の基本が詰まっていました。